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本校は7割の生徒が就職希望です。7月1日が求人票解禁なので、本校ご指名の求人票をいただくために、生徒の希望にしたがって、先生方で手分けして企業訪問をします。
私は、中間考査の4日間を使って、名古屋、浜松、東京、横浜の10社を回りました。「申し訳ありませんが採用を予定していません」という会社がいくつかあり、昨年以上に厳しい状況に直面しました。そんな中で、「採用者数は減らしますが、ずっとお付き合いのある学校ですので、求人票を出させていただきます」と言っていただける会社もあり、「ありがたいなぁ」と思いました。 「やっぱり世の中は信頼でつながっているんだ」と改めて思うと同時に、学校と社会の接点にいる責任を感じました。 午前中に都市を移動して、午後から会社を訪問しますが、会社の中には、郊外の広い敷地が確保できるところや、高速道路へのアクセスのいいインターチェンジの近くなど、公共交通機関ではちょっと不便という場所もあるので、1日3社が精一杯です。だいたい4時くらいに最後の会社を出るのでホテルにチェックインするまでに少し自由な時間が持てるときがあります。 今回は、名古屋で愛知県美術館、東京で国立新美術館と損保ジャパン東郷青児美術館を訪ねることができました。 愛知県立美術館は、クリムトの「人生は戦いなり(黄金の騎士)」が有名なのですが、私はポール・デルブォーが大好きなので、「こだま(あるいは「街路の神秘」)」には目を奪われました。 月夜、円柱が連なるギリシア神殿風の建物が建ち並ぶ石畳に、まるでこだまのように同じポーズの3人の全裸の少女が並んでいます。彼女は、ギリシャ神話でヘラの怒りをかって人の言葉を繰り返すことしかできなくなったニンフ「エコ」なのでしょう。冴え冴えとした月の下の透けるような肌の少女は、細部まで本当にリアルに描かれているにもかかわらず、肉体としての存在感はまったくなくて、少女という概念が形になった正にシュールレアリズムな(現実を超えた)少女です。 国立新美術館では、女性陶芸家のルーシー・リーの作品展が開催中でした。 大学時代に円空や木喰の仏像が好きだった私は、木喰を見出し民藝運動を起こした柳宗悦を尊敬していたので、彼が評価した民陶と呼ばれる重厚な焼き物、たとえば小石原焼きなどを陶器を鑑賞する基準としてきました。その目で、ルーシー・リーの作品を見ると、どれも軽くやわらかく、まったく対極にあるのですが、そこには凛とした気品が漂っていました。 展示の解説によって、彼女の作品のもつシンプルな機能美がバウハウスの影響を受けていること、柳宗悦と交流のあったイギリスの陶芸家バーナード・リーチ(彼は小石原焼きを絶賛していました)に認められず苦労したことを知りました。 彼女の作品のイメージを陶器を鑑賞する基準に加えることで、陶器の見方が広がったかもしれません。 国立新美術館はレストランとカフェが充実しています。夕方だったのでランチには間に合いませんでしたが、ポール・ボキューズの1800円のランチはおいしそうでした。今度来たときは絶対にランチしよう。 東京のいいとこは、知ってる人に会う可能性が低いので男一人でケーキが食べられるってとこです。ティールーム「サロン・ド・テ ロンド」が、ファッション誌「VOGUE NIPPON」とコラボした「VOGUE Cafe(ヴォーグカフェ)」で、ケーキ&ミルクティーをしました。逆さにした円錐の底面のようなカフェから黒川紀章が設計した波打つガラス張りの側壁越しに都心を眺めながらお茶するのは意外と落ち着いたひと時でした。 急いで地下鉄を乗り継いで西新宿に向かいました。高層ビルの42階でゴッホの「ひまわり」を見たかったのです。損保ジャパン東郷青児美術館では、モーリス・ユトリロ展が開催されていました。 ユトリロの絵は、フランス料理のお店の壁を飾っていそうなおしゃれだけどあまり主張しないというイメージがあったのですが、実際に見始めてみるとなんだかゴツゴツと心にぶつかってくる違和感のようなものが気になりました。定規で引かれたような線に強調される遠近法。建物の壁の続きのようにオフホワイトに塗られた空。 解説を読んでみると、そこにはユトリロの波乱万丈の人生がありました。決して恵まれていたとは言えない生い立ち、アルコール中毒の治療のために閉じ込められた部屋で絵葉書を見ながら描き始めた絵、子供のときに一人遊びの相手だった漆喰の白へのこだわり。 実際に見て印象に残った数点の絵は、よく目にするユトリロのおしゃれな絵ではありませんでした。「心に引っかかった共通点は何だろう」と何度か見直して気がついたのはすべて雪の風景でした。 「雪のサンミッシェル教会」「雪のモンスニ通り」石畳も壁も屋根も空もオフホワイトに塗られた色彩に乏しい絵の中にユトリロの絵の核のようなものが鮮やかに表れているように思いました。 最後に別室のゴッホ、セザンヌ、ゴギャンをゆっくりと座って鑑賞して雲の中の高層階を後にしました。 今は横浜のホテルでのんびりしています。
by anisakis51
| 2010-05-21 20:35
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